治療室に入り、患者さんに今日の体の状態をお伺いするとき、「毎日きちんとした便通はありますか?」と必ずお聞きします。
先日、伝統鍼灸学会で見つけた本「赤ちゃんからはじまる便秘問題」
排泄をすることは、食べること以上に大切です。少々体に悪いものを食べていても、すぐに排泄できる人は病気になりにくいものです。
西洋医学的に言えば、便秘は大腸の蠕動運動が不足して・・・という局部的な病となりますが、東洋医学的に見たら、熱性の病の原因のほとんどが排泄不足と言っても過言ではありません。排泄不足とは便だけではなく、汗や尿、月経出血なども含まれますが、排便はかなり重要なポイントです。
東洋医学の視点で見ると、頭痛、発熱、咽痛、胃痛、不眠、生理痛、鬱病、腰痛や肩こり、関節痛まで、出るものが出なくて溜まった毒素が熱を帯び、全身をめぐって発症することは多く見られます。最近では腸内環境とか、腸内フローラとかよく耳にしますね。腸がスッキリしてきれいだと、体調も良く、お肌もきれいになります。毎日出ていても食べすぎの方は宿便が溜まり腸内はあまりはきれいではありません。
待合に置いている絵本「おトイレさん」
大人以上に怖いのが子供の便秘です。大人では慢性病であっても、子供では急性の病を引き起こし、発熱、風邪でない異常な咳き込み、嘔吐、中耳炎、アデノイドや蓄膿などなど、一見腸とは関係ない部分での病であっても、便秘が絡んでいることは多々あります。傷寒論でいうところの陽明病の段階の病は、便通をつけることで治っていくのです。
そのくらい子供の便秘は怖いのですが、意外とお母さんと本人は気にしていません。最近、体調不良で学校に行けないという小学生がチラホラ鍼灸治療にやってくるのですが、大体が便秘症です。主訴の不登校と便秘、実は深いつながりがあります。
何故便秘になるのでしょうか?その答えは簡単です。偏った食生活、運動不足です。手足を動かさないと胃腸は働かないのです。学校に行かないのでますます運動不足になり、ストレスも溜まります。姿勢は悪く、子供なのに中年のおじさんのような体形の子もいます。ネット環境が幼いうちからあるせいか頭は良いのですが、筋肉が少なく骨も弱々しく、常に気が上がっています。
そんな子が来たら、治療しながら、
「もっと歩いて、運動して、野菜や穀物、お魚や海藻をしっかりとって、
絶対、毎日うんちを出すのよ!あなたの仕事は毎日うんちを出すこと!わかった~?」
と親でなく子供の顔をじっと見て言います
これには意味があって、脳に意識づけることで便が出やすくなるという作用があります。そして簡単な体操を教えます。お母さんにも一緒にしてもらいます。すると段々学校に通えるようになっていきます
かく言う私も子供の頃から20代まで、一週間でなくても平気な便秘症でした
突如体調を崩すことも多く、その原因が便秘にあるということを教えてくれる人は誰もいませんでした
今や鍼や運動ですっかり快便の体になり、一日出ないだけでも気持ちが悪いものです。
乳幼児の便秘も時々来院がありますが、小児鍼は大変良く効きます。生きていくうえで排便を習慣づけるということは、想像以上に重要なことだと思います。