先日近所で咲いていた彼岸桜
昨日の朝日新聞の医療欄に、マウスが本能的に怖がる臭いがあり、
その臭いをかぐとマウスの心拍数は半減、体温は3度下がるという
「恐怖臭」の話が書いてあった。
またその本能的な刺激と、電気刺激などの経験的な恐怖を同時に体験させた時に、
より怖がるのは本能的な刺激(嗅覚)だという脳の仕組みも分かったそうだ。
嫌な臭いが健康を害するという、なんとも東洋医学的なお話である。
恐怖は腎と密接な関りがあり、体温が下がるのも納得できる。
しかしそれ以上に興味深いのは、健康と本能というのは
こんなにも密接なつながりがあるということである。
香道やアロマでは、合う香りであれば体調不良を治すこともあり、
身近なところでは食べ物の美味しそうな匂い、花や新緑など季節の香りなど、
良い香りはそれだけで心地が良くなり、体調までも良くすることは
日常でも多々見られることである。
嗅覚だけでなく、味覚、視覚、聴覚、触覚。
私たち鍼灸師の触診(体表観察)も、体表に上手に触れると鍼を刺さずとも脈やツボの状態が改善する。
患者さんが楽になる、そういった触診をしなさいと教えられる。
病が癒えるためには、薬や手術など侵襲的な治療が全てではない。
心と魂が癒えるためには、自らが心地よいと感じる匂いや味、景色や音楽、
また肌の合う人間関係が必要だと強く思う。
いかに自分の心や魂が心地よく感じるか、本能が満足するかが、
一番重要なことなのかもしれない。
白い壁や消毒液の臭いだけで、病が治るはずがない。
もしも病の苦しみより治療の苦しみが上回ったなら、
それは心、魂、本能を害し、健康は得られないと思う。
もっと人間としての幸せを、追求して生きること。
東洋医学の思想は、それを後押ししてくれる。