鍼治療後に死亡?!

はり治療後に女性急死 大阪府警、鍼灸院を家宅捜索
1月9日12時41分配信 産経新聞
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ある方から、こんな情報をいただきました。
こういうことはあるのか??
専門家として、はっきり言います。あります。
私達の流派では当たり前のことです。

この患者さんが、どういった体質の方かよくわかりませんが、
肩こりで通っていたということですから、おそらく肩背部に深い鍼をして、
肺気胸など起こしたか、または肩こりを主訴としながらも、
体の弱った正気が少ない人に、気をもらす刺鍼法でブスブスと刺していたか。

先日3年ほど前に来院した肩こりの患者さんが、久しぶりに来てこう言いました。
「こちらに来ない間によその鍼灸院に行ったら、首やら肩やらブスブス刺されて、
もう痛くて痛くて、かえって悪くなってしまって、
同じ鍼灸院でやり方がどうしてこれだけ違うのかと驚きました」
こんな荒っぽい鍼なら、上手なマッサージや整体、カイロの先生の方がずっと上です。

私の取り入れている治療法は北辰会方式を基本とし、少数の鍼で浅く刺す方法です。
ですので、鍼嫌いの方でも、子供でも、嫌がりません。
しかし少数鍼でも、正しく選穴し、正しく刺鍼すれば劇的に効きますが、
間違ったツボに刺せば、効果がないばかりか悪化させることもあります。
この治療法を長年学んできた理由は、より多くの疾病に対応できると思ったからです。

大阪は鍼の本場。
大阪市内には「鍼中野」という、鍼に由来する地名があるほど鍼好きが多く、
昔から「鍼喰い」といって鍼の刺激(響き)を過剰に求める患者がおられ、
もっともっとと刺激を求めます。慰安的なクセになる鍼の方法です。
楽になったとしても、その時だけですし、重症にはまず使えません。
そういう鍼はコリの深部に響くまで、何度も繰り返し刺すのですが、
体が弱っていて、繊細でデリケートな患者さんにはきつすぎて、
疲労度が増すばかりか、かなりの体調悪化を招く場合もあります。

病に鍼が効くということが、少しずつ世の中に浸透してきているように思いますが、
法的には医療類似行為であっても、鍼はれっきとした医療行為。
明治以前、西洋医学が入ってくる前は日本の第一医学でした。

一本の鍼は劇的に人を救うこともありますが、
打ち所が悪ければ、死に至らしめることもあります。
特に重症疾患を扱う際は、かなりの慎重さが必要であり、
少なくとも、脈診や舌診を長年経験を積み、熟知していないと難しいです。
そういったことを知らずに、ただ闇雲にブスブスと刺す鍼をしていれば、
必ずや患者さんを苦しめる結果となります。

実は私の父は腰痛持ちでしたが、初めて受けた中国人の中国鍼が痛すぎ、
それ以来鍼が大嫌いでした。
そのため、私が鍼灸師になりたいといった時に反対し続け、
私の治療もなかなか受けてはくれませんでした。

私はと言えば、今まで出会った2人の先生が、
ラッキーなことに非常に腕の良い素晴らしい先生で、
丁寧な鍼灸治療により、丈夫な体にしていただきました。
出会った先生によって、これほども鍼灸の印象は変わるのです。
その後、父の鍼への偏見をとるために、どれほどの時間がかかったことでしょう。

十四世鍼医の私の師匠は、多くの弟子達にいつも言います。
「自分の腕で治せないものは触るな。その方が人助けだ」と。
正しく、自分自身の技量を知ることの大事。
自分の人間的器を知ること大事。
そして、今は治せなくても、日々精進する心持ちの大事。
ただ鍼を刺せば治る。そんな簡単なものではありません。

平成13年度より規制緩和で鍼灸学校の数が倍になりました。
鍼灸師免許を持つ人はかなり増えたと思います。
新米鍼灸師の皆さんには、そういったことを知った上で、
神聖なる気持ちで鍼を持っていただきたいと切に願います。

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初めて見た南天の葉を食べるヨモギ。体にいいものをかぎ分ける野生の本能には脱帽です。


(追記・上記の詳細な情報を入手しました。
大阪池田市の10床ほどの規模をもつメイ○ル鍼灸接骨院。
しかも鍼を打ったのは無資格のバイトらしいとのことです。
学生に鍼治療をさせるとは、とんでもないことですね。)

Commented by nmsan2008 at 2010-01-11 23:18 x
「業務上」の場合、「過失」が罪に問われますね。
鍼灸院だけの問題ではなく、車の運転にも適用されますね。
私たちも常に人を傷つけないよう気をつけたいものです。

葉っぱを食べるヨモギちゃん、自然の本能を持ってますね。
自然界に生きる者たちは、食べられる物、食べられないものを
見分ける能力を備えていますね。
だけど時々、人間の作った毒入り食べ物は食べてしまいます。
そう考えると、人間は時として恐ろしい存在ですね。
Commented by 44しっぽ at 2010-01-11 23:24 x
ヨモギさん、本当にありがとうございました。
今回のお話は非常にためになりました。いつか、きっと本にまとめて下さいね。本当は、その前にお師匠様の本を拝見しなければなりませんけどね(笑)

医療行為のミスと言うと、大きな病院で、隠されていたとか、死因が改ざんされていたなどの話が、よく耳に入ったので、病院不信の人も少なくないでしょうが、医師だけでなく、患者の方も、その治療や薬によって、どのようなリスクもあるかということを少しは理解することが大切だと思いました。

僕も、東洋医学がいいとやみくもに信じるよりは、どのような病気に対して、どうだから優れているのかっていうことについて、もう少し勉強したくなりました。

こんなニュースくらいで、鍼灸に対して不信が広まるとは思いませんが、ヨモギさんの正しい治療とその効果がもっと広く知られることを願っています。

それから、大阪が鍼灸の盛んなところとは今まで知りませんでした。針中野の地名の由来も。
子供の頃に鍼治療を受けたことがありましたが、おかしなことにもならず、痛くもなかった気がするので、いい先生だったのかもしれません。
Commented by germanmed at 2010-01-12 04:11
こんにちは。
某SNSでこのニュースに関する日記を見たら、
「こわっ」「そんな事があるのねー」という一般人らしき反応と、
「ある訳ないだろ」「鍼灸抑圧のための捏造」
という鍼灸関係者らしき反応が大半で、
この後者の反応にはとても驚きました。
「呼吸困難を訴えていなかったから、気胸の訳がない。記者は医学知識が無さ過ぎ」という知ったかぶりの日記も見掛けました。
で、関係コミュで、その事についてトピックをたてたのですが、そこで力尽きて、ブログ記事にまではならず・・・。
ヨモギさんを見習って、頑張って記事にまとめてみようかしら。
Commented at 2010-01-13 13:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yurikak5 at 2010-01-13 20:31
nmsan2008様
その通りですね。
人の命をあずかる仕事は皆一緒。
軽率な考えは持つ人は怖いですね。

動物でも毒入りまんじゅうを食べるものもいます。
研ぎ澄まされた本能を忘れたくないものです。
Commented by yurikak5 at 2010-01-13 20:38
44しっぽ様
最近ニュースや新聞に目を通す余裕がなく、
情報ありがとうございました。

特に医療に関しては、知識武装をしっかりとして、
見る目を養った方が得策です。
今はネットで手軽に様々な情報を手に入れられますが、
またその中から選ぶ目が大切ですね。
私の父でも、私や兄がネットや書籍や知人からの情報を得、
色々試行錯誤しながらも、
最良の方法で健康を保っていると思います。
患者さんが勉強すれば、医療者も勉強せざるをえません。
今回のことが、鍼灸業界の全体のレベルアップに
つながればいいなと思います。
Commented by yurikak5 at 2010-01-13 20:47
くま様
ドイツでも話題になっていたのですね。
関係者はそういうでしょう。身の保全のために。
政治家と同じですね。日本は何でも不透明です。

鍼灸は諸刃の刃だということを、専門家が一番知りません。
患者さんがもっと賢くなる他ないと思います。
Commented by yurikak5 at 2010-01-13 20:50
鍵コメ様
私も前に見ました。筋肉の発達した丈夫な方なら、
大丈夫とは思いますが、ちょっと怖いですね。
スポーツ鍼灸のやり方です。
絶対に内臓の弱った人には行ってはいけません。
Commented by germanmed at 2010-01-14 03:55
ヨモギさん、こんにちは。
あ、あの↑のは、日本のネット界の話しです。
紛らわしくてすみません。
Commented by yurikak5 at 2010-01-14 21:27
くま様
ああ、そうだったのですね。了解です^^
by yurikak5 | 2010-01-11 19:38 | 東洋医学・鍼灸 | Comments(10)

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