葉室先生と鍼灸

先日スタッフと鍼灸の話をしていて「この本読むといいよ」と、ふと思い出した一冊。20年前診ていた患者さんが貸してくださり、魂の深い部分で感銘を受け、ずっとずっと長い間心の片隅に眠っていた本。旧版は古本のみですが、新装版が出版されていました。



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左が旧版、右が新版


著者の葉室頼昭先生はもともと阪大の医学部出身のお医者さんですが、大野外科病院(現大野記念病院)院長をされた後、大阪寺田町で葉室形成外科をご開業され、院長職の傍ら神職の最高階位の資格を取得され、平成4年「枚岡神社」宮司に就任、平成6年「春日大社」宮司に就任、平成21年に82歳でご逝去されました。

葉室先生は東洋医学にも造詣が深く、西洋医師でありながら鍼灸治療もされる先生です。
本の中でも「第二章 東洋医学の不思議」は鍼灸師にとって必読部分で、形成外科で赤ちゃんの先天性の唇裂などの手術を行う際、術後に小児鍼(刺さない鍼)をすると非常に傷の治りが早く傷もきれいになること、発熱や傷の部分の腫れが引くので炎症止めや痛み止めなどがほとんど必要ないこと、また入院中に癇の虫が出る赤ちゃんがいるが、その時も鍼治療をすると夜泣きが減り、唇の縫合後の悪化を防いでくれるので非常に鍼灸が役立つという話が書かれています。

また麻酔の副作用で吐いたり腰が痛いと言って苦しんだりする人にも鍼治療が非常に有効だった話や、赤ちゃんが麻酔の副作用でショックを起こした時、また大人の症例では脳溢血などの救急疾患を手の小指にある心臓のツボ(おそらく少沢だと思われます)の刺絡(ほんの少し出血させる治療法)で救った話など、面白い臨床の話がいくつか紹介されています。

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ご自身も医学部時代にひどい肺結核で喀血し命も危ぶまれたのが、治療もせず消えてしまったという不思議な体験をされていて、西洋医学と東洋医学の両方の視点から、病になるのは何故か、また病が治らないのは何故か、単なる宗教的な考え方ではなく、自然との共生、人間を形作る細胞への感謝が健康の基本となること、日本人と西洋人の根本的な考え方の違い、日本という国が世界的に類まれなる国であり、その国に住む日本人の直観力や感性のすごさなどなど、私の拙い文章力では説明しきれませんが、最後の1ページまでに為になり、また日本人としての自信と希望が持てるようなお言葉が隅々まで溢れていて、読んでいて感動して涙が出てきてしまいました。

今になって急に何故この本を思い出したのか分かりません。最近鍼灸師になったばかりの人に、この本を広めなさいというメッセージでしょうか。しかし、この本は鍼灸師でなくとも、今心の弱っている日本人みなさんに読んでいただきたい一冊です。

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葉室先生が枚岡神社の宮司もされていたとは、恥ずかしながら存じませんでした。先生と縁のある枚岡神社の梅を今年も見ることができて、有難いことだなぁと感じています。これからも座右の銘の一冊として大切にしたいと思います。



Commented by Billyamagami at 2016-03-01 20:07 x
『神道のこころ』、読みました。以下、心に残ったこと、感じたことをランダムに。

■東洋医学では人間をひとつの宇宙と見る。宇宙は本来、バランスが保たれている。心とからだのバランスが崩れると心身に変調をきたす。
■明治政府が東洋医学も西洋医学と同様、正式な医学として扱っていれば素晴らしい日本医学が生まれていただろう(西洋医学の医者として自ら東洋医学を取り入れたハイブリッド医学(?)で患者さんの治癒力を飛躍的に高めた著者ならではのご意見)
■宇宙の絶妙なバランスを可能にしている宇宙の心と人間の心はつながっている。そのつながりが「気」? 東洋医学はその「気」に働きかけることによってバランスを取り戻すと理解。
■鍼(あるいは灸)は体調がおかしくなってから受けるものなのか。たとえば健康増進、免疫力アップのための(からだに特に悪いところがなくても)鍼灸というのはあり?
■神道は宗教ではなく日本人の人生観、自然観⇒納得。
■理屈抜きの感謝の心を持つことが大事⇒これも納得。難しいことだけど。

大変興味深く読ませて頂きました。ありがとうございました。ちなみにこの本と同時に購入したのは『中島みゆき全歌集1975-1986』。
Commented by yurikak5 at 2016-03-02 22:50
Billyamagami様
早速読まれたんですね^^
分かりにくい東洋医学の世界が少しご理解いただけたかなと思います。
「鍼(あるいは灸)は体調がおかしくなってから受けるものなのか。・・」という部分ですが、
きっかけ体調不良から来られる方が多いですが、主訴が治ってからもずっと定期的に来院されている方は多数います。虚弱体質の改善、様々な病気の予防、健康増進、ケガの早期回復などなど、うちでは不妊治療やがんの再発予防の方も多くいらっしゃいます。細かく言えば、鍼灸にも色々な治療法があるため全てとはいえませんが、東洋医学は未病を治すと言って、予防医学として非常に優れていると思います。
by yurikak5 | 2016-02-21 22:42 | 東洋医学・鍼灸 | Comments(2)

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